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本記事は公開1~2か月前に配信した富裕層向け不動産投資メルマガの抜粋です。
現場で感じる不動産市況 ~地銀の決算発表と融資・預金戦略など~
【1】現場で感じる不動産市況
5月は当社の半期決算のため、仕入と販売の両面でアクセルを踏み込み、ラストワンマイルを駆け抜けた1か月でした。
当社では、売買の際に売主の立場も買主の立場も経験していますが、それぞれの案件に唯一無二のストーリーやドラマがあり、金融機関をはじめとして、様々な関係者の想いが重なってこそ結実していることを実感します。
仕入は入札案件が増加しており、競合他社と比べて当社としてどこに強みを置いて攻めるべきか、リフォーム及びリーシングでどこまで付加価値や創造力を発揮できるのか、日々試行錯誤しています。
とはいえ、昨今は満額でも購入できない物件もあり、経済合理性を超えた信頼関係や縁が存在しています。
5月のレインズ成約事例は昨対比160%で、件数もさることながら満額又は満額越えの事例もございました(詳細は下記ご参照ください)。
背景として、株価の先行き不安や、日銀の利上げ観測の後退などありますが、収益が安定する実物資産への組み換え需要が高まったと感じます。
また、5月1日に日銀の展望レポートが発表され、消費者物価指数は2%前後を推移していくとの見通しが示されました。今後、デフレ脱却が明確になり、物価が安定的に上昇するトレンドを作ることができれば、欧米諸国のように建物を丁寧に修繕管理していく方向に進むのではという期待もあります。
例えば、米国では築年数は減価率に影響を及ぼさず、鑑定実務で【実質的経過年数】を採用しています。期待建物寿命については、low~excellentまで6段階あり、修繕を行うと若返りするという発想なので設備投資のメリットを感じられる仕組みだと思います。
一方、当社は中古RC物件を専門にしていますが、日本では築45年以上の新耐震基準の物件が存在していないため、直接的に参考にする指標がないという観点でチャンスだと感じています。
当社実績においても、築年数と利回りは相関があり、修繕をしなければ最終的には建物価値がゼロとなって土地資産のみになります。ただ、税務上のルールの関係で、築47年で建物価値がゼロになるような錯覚に陥るため、修繕を行うインセンティブが限られてしまうという課題はあります。
もちろん、10年後、30年後も賃貸需要が存在する立地選びは重要ですが、その上で、RC(鉄筋コンクリート造マンション)の魅力を最大限引き出せるようなリフォーム及びリーシングを行い、日本の不動産市場を活性化できようなマーケットリーダーを目指していきます。


【出典:国交省中古住宅流通促進・活用に関する研究会】

【2】地銀の最新融資動向
各地銀の決算発表があり、当社とお取引のある金融機関を中心にポイントを抜粋して整理しました。日本において、2025年3月からバーゼルⅢの最終適用があり、自己資本比率を意識した預金及び貸出戦略が感じられました。
預貸率の関係上、貸出を増やすためには預金が必要ですが、千葉銀行、横浜銀行などの大手地銀以外は預金流出が課題となっており、融資条件として預金のお願いが加速すると思われます。
実際、預金増加の千葉銀行様でも預金移動条件が厳しくなっており、直近では東京スター銀行様での融資条件としてお願いがありました。一方、西京銀行様は地元の山口限定で、預金キャンペーン(100万円以上で5万円キャッシュバック)を実施し、10万口座の開設と預金1300億円を増やすことに成功しています。
また、バーゼルⅢ適用で自己資本比率が下がってしまった金融機関もあり、リスクアセットに対して慎重姿勢を示す可能性があります。
直近で新規融資額が大幅に増えていたスルガ銀行様について、26年度計画は25年度実績を下回る数値が公表されています。
(投資用不動産ローン:25年度実績 902億円⇒26年度目標 750億円)
今後、ブレーキをかけるのか、結果的に120%達成を目指すのか、融資方針の変化などには注視していきます。
なお、リスクアセット=資産額×リスクウェイトのため、リスクウェイト(RW)がKPIとなります。不動産担保ローンのRWについて、従来は35%(フル保全)又は75%(一部保全)でしたが、現在はLTV比率に応じてRW=30%~105%まで幅が広がりました。
※RW:国債・現金0%、株式100%、高いほどリスクの高い資産
LTV比率=不動産関連債権/担保評価
担保評価の考え方は、各金融機関によっても基準が異なると思いますので、
①担保評価の考え方
②担保評価以上の融資に対する判断
が今後のポイントになります。
金融機関としては、保全率の高い(=LTV比率の低い)案件を選びたいという意向があり、結果的に自己資金比率が高まっていく傾向があります。
参考:
千葉銀行
https://www.chibabank.co.jp/company/ir/library/tanshin
コンコルディアフィナンシャルグループ
https://www.concordia-fg.jp
スルガ銀行
https://www.surugabank.co.jp/surugabank/investors/ir
東京スター銀行
https://www.tokyostarbank.co.jp/press_ir/library
西京銀行
https://www.saikyobank.co.jp/aboutus/gaikyou/acc_report/index.html


【3】経済・物価情勢の展望
5月発表の展望レポートからいくつか抜粋してご紹介致します。
まず、基本的見解から「賃金と物価の好循環」というメッセージが消え、代わって通商政策の不確実性と個人消費の下振れリスクに言及しています。将来の投資行動においては、予想物価上昇率が重要ですが、目先の水準においては実質金利がマイナスで、投資需要を喚起する方向に働いていると考えます。
また、賃金と物価の好循環が生まれると名目金利も上げていけますし、産業の新陳代謝が進み、日本経済にとってもメリットがありますが、終身雇用などの硬直的な雇用制度が課題になっていると感じます。
直近の人手不足は平成バブル期を超えており新卒市場を中心に労働市場も変化していますので、物価上昇に伴う中長期的な所得分布や所得別居住者分布にも影響を与える可能性はあります。今後も所得分布が横に広がることで、立地も含めた居住サービスの質や内容も多角化していくかもしれません。
収益不動産は物価、所得との相関系関係も高いので、労働需給、所得動向は注視していきたいと思います。



レインズから分かる収益不動産マーケット
次に5月のレインズ成約状況についてご紹介させて頂きます。
1都3県の成約件数としましては昨年対比160%増で先月からは1件増加となっています。
2025年4月成約数:63件(確定値)
2025年5月成約数:64件(速報値)
※5月は速報値のため上振れする可能性はあります。

レインズ在庫は【平成元年築以降、1億~5億、都内でレインズに1557件掲載、※重複有】
先月の1536件から21件増加でした。
続いてレインズ成約事例からいくつか抜粋いたしましたので、ご参考までにご覧ください。
①「草加」駅 徒歩12分 1984年 RC造
売出価格 1.55億円 ⇒ 成約価格 1.45億円
土地 143坪 建物 161坪
成約利回り ⇒ 8.4%
ポイント:EV無、角地、ファミリータイプ
留意点:築40年RC、地盤△

②「みのり台」駅 徒歩5分 1988年 S造 ※満額
売出価格 7,000万円 ⇒ 成約価格 7,000万円
土地 86坪 建物 129坪
成約利回り ⇒ 7.7%
ポイント:整形地86坪、駅5分、ハザードリスク低
留意点:築36年鉄骨、総戸数6戸

③「八王子」駅 徒歩20分 2014年 RC造 ※満額
売出価格 7500万円 ⇒ 成約価格 7500万円
土地 27坪 建物 61坪
成約利回り ⇒ 6.7%
ポイント:築11年RC、ハザードリスク低
留意点:単身間取りで駅20分、建物グレード△

④「国領」駅 徒歩3分 1990年 RC造
売出価格 1.32億円 ⇒ 成約価格 1.22億円
土地 60坪 建物 75坪
成約利回り ⇒ 6.2%
ポイント:駅3分、1億円台RC
留意点:未登記店舗あり

⑤「大森」駅 徒歩8分 2003年 RC造 ※満額
売出価格 1.98億円 ⇒ 成約価格 1.98億円
土地 50坪 建物 73坪
成約利回り ⇒ 5.0%
ポイント:全面タイル張り、整形角地
留意点:液状化リスク

⑥「南砂」駅 徒歩6分 2025年 RC造
売出価格 6.88億円 ⇒ 成約価格 6.65億円
土地 46坪 建物 299坪
成約利回り ⇒ 4.7%
ポイント:新築RC、接道〇、容積400%
留意点:地盤△、ハザードリスク

⑦「江古田」駅 徒歩6分 2016年 RC造
売出価格 4.3億円 ⇒ 成約価格 4.26億円
土地 97坪 建物 237坪
成約利回り ⇒ 4.2%
ポイント:100坪整形地、ハザードリスク低、広めの単身
留意点:サブリース、日当たり△

⑧「成城学園前」駅 徒歩2分 2010年 RC造 ※満額
売出価格 5.9億円 ⇒ 成約価格 5.9億円
土地 126坪 建物 197坪
成約利回り ⇒ 3.9%
ポイント:成城学園駅2分、125坪整形角地、タイル張り
留意点:高圧線下部分あり

⑨「西武柳沢」駅 徒歩12分 1987年 RC造 ※満額越え
売出価格 6980万円⇒成約価格 7700万円
土地 60坪 建物 90坪
成約利回り ⇒ 2.7%
ポイント:建物込坪単価130万円、ハザードリスク低
留意点:稼働率18%、狭小ワンルーム
