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2022年11月/現場で感じる収益不動産市況

2023.01.05

月次市況解説

本記事は公開1~2ヶ月前に配信した不動産投資メルマガの抜粋です。

金利上昇の影響について

不動産市況の展望について、足元では将来的な金利上昇懸念が持ち上がっていますが、依然として投資用不動産の需要は旺盛で、特に円安の好機を狙う海外投資家や不動産会社の長期保有資産としての需要が増えている印象です。

直近では円安の調整が進んでいますが、依然として相対的に円安傾向であり、今後も海外投資家の需要は増加する見込みで、

都心部のマンションは現金決済の海外勢によって高騰している状況です。

国内外投資家別の不動産取得額を比較したグラフ
不動産賃貸業の固定資産を表したグラフ
【出典:2022年 10月 金融システムレポート】

一方、日銀総裁の交代や世界的な利上げの影響を受けて、日本の金利の上昇懸念も高まりつつあり、

長期融資の固定金利について先行き不透明な状況ではあります。

国内の銀行の貸出金利を表したグラフ
金融機関の不動産業向けの貸出を表したグラフ
【出典:2022年10月 金融システムレポート】

調達金利が上昇すると、イールドギャップ(ネット利回り-調達金利)が低下するため、不動産価格に対して下落圧力がかかりますが、どちらかというと、収益還元価格への影響が大きいのではと思います。

不動産の価格形成要因として、収益還元価格と積算価格がありますが、積算価格については、その構造上、直接的には金利の影響を受けません。

金利が上がってもただちに路線価が下がるわけではないですし、景気が良ければ地価の上昇もあり得るため、特に土地の資産性に強みがある物件の相対的優位性が高まる可能性はあります。

(個別事例は後述のレインズ成約事例をご参照ください)

今後、固定金利と変動金利のどちらを選ぶかは経営判断として悩ましいですが、例えば、変動金利の場合、全銀協TIBORに連動する金利を採用している地銀が多いです。

全銀協TIBOR運営機関のHPで履歴のある直近10年では0.1%の変動幅に収まっています。

(11月30日の1MONTH TIBORは0.06818%)

全銀協TIBOR運営機関

https://www.jbatibor.or.jp/rate/

ただ、仮に調達金利が上昇する場合でも、日本経済の状況を考えると、大幅引き上げは難しいと思われますし、

安定的な賃金上昇の見えない現時点では金融緩和の出口のハードルはかなり高いと思います。

また、米国では住宅ローン金利が7%を超えましたが、住宅の買い控えが起きて賃貸に需要が流れているため、

タイムラグはあるものの、特にファミリータイプの賃貸の需要は固いと思います。

(新築時、利回りが取れないファミリータイプの物件を建築するオーナーが少なく、ファミリー賃貸マンションの新規供給が抑えられやすいという事情もあります。)

日米のモノ価格・サービス価格・賃金の動きを比較したグラフ
出典:【2022年12月1日 日経新聞】

日銀の金融システムレポートでは、リーマンショックレベルの金融危機のシミュレーションも行っていますが、

当時に比べて金融機関の財務が健全であるため、急激に融資を絞り込むという可能性は低いと推測しています。

そのため、いわゆるサラリーマン投資家の時代は終わり、一部の富裕層と海外投資家が主要プレイヤーと市場占有率を高めていくかもしれません。

当社としましては、賃金上昇⇒家賃上昇によってある程度リスクカバーできるよう賃貸管理をしていきたいと思います。

11月のレインズ成約事例

続いて11月のレインズ成約事例についてご紹介させて頂きます。

1都3県の成約件数としましては昨年対比で140%で、先月からは3件減少となっています。

・2022年10月成約数:44件
・2022年11月成約数:41件(速報値)
2021年11月〜2022年11月の成約数比較
レインズより当社集計

レインズ在庫は【平成元年築以降、1億~5億、都内でレインズに1257件掲載、※重複有】

先月の1279件から微減です。

続いて11月のレインズ成約事例からいくつか抜粋させて頂きましたのでご参考までにご覧ください。

全体的に収益還元評価(利回り)が魅力の物件よりも、土地の資産性に魅力がある物件の成約が多い傾向にあります。


2022年11月 レインズ成約事例(抜粋)

「玉川学園前」駅 徒歩24分 H14年 RC造
売出価格 8,000万⇒成約価格 8,000万 ※満額
土地 101坪 建物 90坪
成約利回り⇒約7.5%
ポイント:残存27年RC、土地300㎡以上、2018年外壁防水実施
留意点:駅徒歩24分、全5戸

物件チラシ

②「荏原中延」駅 徒歩5分 S56年 RC造
売出価格9,280万⇒成約価格9,280万円 ※満額
土地27坪 建物71坪
成約利回り⇒約7.3%
ポイント:3路線利用可能、広めの単身間取り(29㎡前後)、商業地域
留意点:旧耐震、土地91㎡

物件チラシ

③「新桜台」駅 徒歩3分 H1年 S・RC造
売出価格2.3億⇒成約価格2.152億
土地66坪 建物154坪
成約利回り⇒約7.1%
ポイント:最寄り駅徒歩3分
留意点:1Fテナントあり、一部鉄骨造で残存1年

物件チラシ

④「吉祥寺」駅 徒歩14分 S63年 RC造
売出価格3.325億⇒成約価格3.15億
土地91坪 建物247坪
成約利回り⇒約7.1%
ポイント:土地300㎡以上、接道◎
留意点:テナントあり、単身3点間取り

物件チラシ

⑤「蒔田」駅 徒歩8分 H5年 RC造
売出価格9,650万円⇒成約価格9,520万円
土地41坪 建物92坪
成約利回り⇒約7.1%
ポイント:北東角地、土地300㎡以上、接道◎
留意点:狭小単身間取り、賃料3~4万円程度(修繕費△)

物件チラシ

⑥「京王多摩川」駅 徒歩4分 H16年 S造
売出価格2.1億⇒成約価格1.995億
土地104坪 建物119坪
成約利回り⇒約6.8%
ポイント:H16年築の重鉄造、2018・2020年大規模修繕実施、BT別単身間取り
留意点:ハザードリスク

物件チラシ

⑦「横浜」駅 徒歩17分 H11年 S造
売出価格1.15億⇒成約価格1.135億
土地99.97坪 建物92.89坪
成約利回り⇒約6.26%
ポイント:旭化成施工、横浜駅まで徒歩アクセス可能、土地300㎡以上
留意点:徒歩17分、DK間取り

物件チラシ

⑧「大森」駅 徒歩8分 H15年 S造
売出価格1.61億⇒成約価格1.61億 ※満額
土地54坪 建物76坪
成約利回り⇒約6.0%
ポイント:旭化成施工、25~27㎡の広め単身間取り、整形地
留意点:ネット料金負担あり、接道△

物件チラシ

⑨「南林間」駅 徒歩9分 H21年 RC造
売出価格1.75億⇒成約価格1.70億
土地93.06坪 建物133.39坪
成約利回り⇒約5.3%
ポイント:残存34年RC、三方接道
留意点:西側私道接続、字型△

物件チラシ

⑩「大泉学園」駅 徒歩3分 H17年 RC造
売出価格1.37億⇒成約価格1.37億 ※満額
土地47坪 建物74坪
成約利回り⇒約5.0%
ポイント:残存30年RC、2021年大規模修繕実施、駅徒歩3分
留意点:オール電化、セコム・ジェイコム費用△、前面道路を拡幅予定

物件チラシ

11「西小山」駅 徒歩12分 H16年 S造
売出価格1.278億⇒成約価格1.24億
土地 32坪 建物 46坪
成約利回り⇒約4.9%
ポイント:目黒区アドレス、2022年・2017年建物修繕実施
留意点:設備グレード△、各駅徒歩10分以上

物件チラシ

12「阿佐ヶ谷」駅 徒歩8分 H13年 S造
売出価格1.75億⇒成約価格1.75億 ※満額
土地67坪 建物71坪
成約利回り⇒約4.4%
ポイント:積水ハウス施工、角地
留意点:北側私道接続、植栽維持費△

物件チラシ