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2022年12月/現場で感じる収益不動産市況

2023.02.01

月次市況解説

本記事は公開1~2ヶ月前に配信した不動産投資メルマガの抜粋です。

2023年の不動産投資はどうなる?

いよいよ2023年がスタートしました。

昨年末は日銀の金融緩和修正があり、サプライズとなりましたが、

賃貸経営において日銀の金融政策は大きなポイントになるかと思います。

また、黒田総裁の任期満了日の4月8日まで約3か月ですが、

次期総裁候補とその方針への注目がますます高まっています

金融機関のお話を聞きましても、もう一段階の実質的利上げを想定しているとの声が多く、物件を購入したい方、売却したい方、様子見の方、それぞれの思惑が錯綜し、相場が変動するタイミングとなりそうです。

【出典:2022年 12月21日 日経新聞】
【出典:2023年 1月1日 日経新聞】

まず、2023年の投資環境のマイナス要因としましては、金利上昇リスクが挙げられます。

今回の方針変更で長期金利の許容変動幅が0.25%⇒0.5%になりましたが、長期金利の上昇に合わせて融資金利も上昇していく見込みです。

金利が0.25%上昇した場合の価格への影響ですが、仮に1億円の物件で自己資金1割で計画していた場合、9000万円×0.25%=225,000円/年の金利負担増となり、表面利回り7%の物件の場合、225,000円/7%=約320万円で価格1億円の約3%相当のインパクトがあると試算されます。

一方で、売主の立場で考えたとき、上記物件の場合、ネット5%と仮定してNET収入500万、金利1%と仮定して-90万円、税金等も考慮して、1年間の純資産増加を約300万円と試算すれば、金利上昇分の下落圧力と保有中の賃料を比較検討し、保有継続という判断もあります。

上記は収益還元による考え方ですが、積算及び資産性重視の物件に対するインパクトは相対的に少ないと考えられます。

また、個人、法人、不動産会社とそれぞれで判断基準は異なりますが、10年前との比較をしますと、特に不動産会社の融資期間が延びているため、相場変動は緩やかになるのではと感じます。

個別要素が大きいことは大前提ですが、金利変動はポートフォリオを再検討するきっかけにはなるのではないでしょうか。

ちなみに現在の長期金利は約0.5%ですが、2015年の約8年前と同じような水準となっております。

・日本の長期金利(10年間)の推移

【出典:日経新聞 チャート】

その他、一時150円を超える円安から130円まで円安が是正されましたので、海外投資家の需要も一度収まっていく可能性があります

ポイントは、金利上限の見極めと時期かと思いますが、こちらは日銀総裁人事と今後のインフレ率、米国の金融政策など、色々な変数があり、意見が分かれる点かと思います。

一方でプラス要因としましては、物価上昇⇒賃金上昇⇒賃料上昇という脱デフレへの期待があります。

賃料は粘着性が高いため、急激には変動しませんが、住宅購入を控えて賃貸にシフトする動きが増え、特にファミリー物件には追い風となる可能性もあります。

日本の物価上昇については、どうしても懐疑的にならざるを得ないですが、仮に賃金が安定的に上昇する場合、リースアップを狙える物件の幅が広がると考えます

単身物件は外国人の流入と差別化がポイントですが、引き続き立地、間取りの需給バランスは重要です。

また、米国などを中心に景気が悪化した場合、コロナ禍の初期のように安全資産としてのレジデンスに需要が集中し、結果的に下支えされる可能性も考えられます。

仮に金利上昇局面で価格が下落していく場合、表面利回りも調達金利も上昇することになるため、表面利回り-調達金利=イールドギャップは大きく変わらないと推測します。

仮にご年収や金融資産が目減りした場合、そもそも融資条件が悪化するため長期で考えた場合、その時の資産背景、融資条件も大きな検討材料になり得ると考えます。

続いて、年末に「楽待」で実施されたアンケート結果についてもご参考までに共有させて頂きます。

【出典:楽待HP】

※アンケート実施概要
調査時期:2022年12月13日~25日
有効回答数:305

2023年の価格と融資姿勢の予想は均衡していますが、未来のことは誰にも分からないという基本原則を考えれば、大方針を決めた後は個別検討していくことが望ましいと言えるでしょう。

レインズから分かる収益不動産マーケット

続いて12月のレインズ成約状況についてご紹介させて頂きます。

1都3県の成約件数としましては昨年対比で95%で、先月からは2件増加となっています。

2022年11月成約数:35件(確定値)

2022年12月成約数:37件(速報値)

※12月は速報値のため上振れする可能性はあります。

【レインズより当社集計】

レインズ在庫は【平成元年築以降、1億~5億、都内で レインズに1,258件掲載、※重複有】

先月の1,257件から横ばいでした。

続いて12月のレインズ成約事例からいくつか抜粋させて頂きましたので、ご参考までにご覧ください。

今月の特徴としましては、

・都心ではなく郊外物件の成約が多いこと

・比較的指値を受けての成約が多いこと

が挙げられます

年末の金融緩和修正を受けて指値に応諾した可能性や、個人名義の物件で年内に契約したいという背景が推測されます。

都心の物件が動かなかったのは、そもそも収益性よりも資産性に重点があるため、売主側が大きな影響がないと判断したのかもしれません。


北習志野」駅 徒歩12分 H3年 S造
売出価格 7,180万円 ⇒ 成約価格 6,900万円
土地 77坪 建物 118坪
成約利回り ⇒ 約 9.2%
ポイント:旭化成施工、2Kの広め単身間取り
留意点:稼働率66%、残存2年S造

②「拝島」駅 徒歩5分 H1年 RC造
売出価格 1.05億円 ⇒ 成約価格 1.0億円
土地 141坪 建物 175坪
成約利回り ⇒ 約 9.1%
ポイント:徒歩5分のファミリー間取り、稼働状況〇、プロパンガスあり
留意点:残存13年RC、和室あり

③「北浦和」駅 徒歩14分 S55年 RC造
売出価格 5,800万円 ⇒ 成約価格 5,350万円
土地 54坪 建物 89坪
成約利回り ⇒ 約 8.8%
ポイント:1億円以内のRC、接道〇
留意点:旧耐震、契約不適合免責

④「千葉中央」駅 徒歩6分 H5年 S造
売出価格 1.49億円 ⇒ 成約価格 1.38億円
土地 61坪 建物 163坪
成約利回り ⇒ 約 8.4%
ポイント:内装リフォーム済み、前面タイル貼、整形地
留意点:1F事務所あり

「北久里浜」駅 バス8分+徒歩2分 H9年 RC造
売出価格 2.20億円 ⇒ 成約価格 1.90億円
土地 125坪 建物 277坪
成約利回り ⇒ 約 8.2%
ポイント:残存21年RC、公道角地
留意点:店舗×2あり、オーナー住戸あり

「中河原」駅 徒歩10分 H6年 RC造
売出価格 2.60億円 ⇒ 成約価格 2億円
土地 236坪 建物 240坪
成約利回り ⇒ 約 7.6%
ポイント:土地780㎡、建物グレード〇、60㎡前後のファミリー間取り
留意点:ハザードリスクあり

「新所沢」駅 徒歩2分 H14年 S造
売出価格 1.40億円 ⇒ 成約価格 1.32億円
土地 60坪 建物 100坪
成約利回り ⇒ 約 7.3%
ポイント:駅徒歩2分、インターフォン交換済み
留意点:1F事務所あり

「市川」駅 徒歩7分 S62年 RC造
売出価格 1.765億円 ⇒ 成約価格 1.73億円
土地 80坪 建物 139坪
成約利回り ⇒ 約 6.8%
ポイント:タイル貼RC、駅近ファミリー間取り
留意点:店舗×2あり、都市計画道路(計画決定)あり

「三浦海岸」駅 徒歩2分 H17年 RC造
売出価格 2.98億円 ⇒ 成約価格 2.98億円 ※満額
土地 126坪 建物 181坪
成約利回り ⇒ 約 5.44%
ポイント:徒歩2分、BT別単身間取り、タイル貼RC
留意点:利回り6%以下