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夕暮れのマンションの外観

家賃増額請求権について

本記事は公開1~2ヶ月前に配信した不動産投資メルマガの抜粋です。

生活必需品、水光熱費などの物価上昇が進むにつれて、オーナー様からの賃料増額、入居者様からの賃料減額のお話が増えている印象です。そこで改めて基礎となる法律、見解を整理したいと思います。

まず、借地における地代の増減額請求は借地借家法11条に、借家における家賃の増減額請求は同法32条に規定されています。

また、基本的には、借家人保護の考えがありますので、一定期間、家賃を増額しない特約があれば有効となります。

(ただし、減額しない特約は無効)

次に、家賃を増額、または減額する場合、一方的に希望家賃を主張して成立するかが論点になりますが、

増減の意思表示(通常、配達証明付内容証明郵便で行う)が相手方に到達した時点(配達証明に記載された日付)で

効果が発生すると解されています。

もちろん、すぐに相手方が承諾すれば問題ありませんが、基本的には利益相反するため協議になります。

協議で合意できればベストですが、合意できない場合、

①賃料増減額の申し立てを行う

②賃料増減額請求訴訟を行う

の選択肢があります。

次に、双方の主張をもとに「適正賃料」を決めることがポイントになります。

この適正賃料は、不動産鑑定士などの専門家の意見をもとに決められることが多いですが、

そもそも賃料の鑑定評価には、

A:新規賃料の鑑定評価
B:継続賃料の鑑定評価

があり、この場合の適正賃料とは、Bの継続賃料を指しています。

したがって、Bの継続賃料は、現在の賃料相場(新規賃料)ではなく、最終更新時の契約賃料を基準にして算出されます。

つまり、その仕組み上、大幅に賃料を変更することは難しいといえます。

もちろん、双方が合意すればその限りではありませんが、

現在支払っている賃貸条件も大きなポイントになるということはご理解頂ければと思います。

また、仮に入居者様が契約賃料を下回る金額で一方的に家賃を支払った場合ですが、

適正賃料が確定するまでは、

基本的には最終更新時の賃料(従前賃料)を支払い義務があると解されています。

参考:賃料減額請求後の賃借人の支払額について

公益社団法人 全日本不動産協会
賃料減額請求後の賃借人の支払額 - 公益社団法人 全日本不動産協会

その他の対策として、定期借家契約を締結することで、より明確な賃貸借契約を締結するという方法もあります。

もちろん、賃貸借契約は双方の信頼関係が大前提ですので、一方的に自らの意見を主張して内容証明を送るのではなく、

その主張の背景や理由など丁寧にお伝えしていくことが大切であり、管理会社の役目であると考えています。