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2025年9月 / 現場で感じる不動産市況

本記事は公開1~2か月前に配信した富裕層向け不動産投資メルマガの抜粋です。

現場で感じる不動産市況~最新成約事例、融資戦略、賃貸経営のシャープレシオなど~

【1】現場で感じる不動産市況

現在、日本の不動産市場は明確な価格上昇トレンドにあります。特に、2025年9月のレインズ成約事例(当社集計)では、昨対比で約2倍超と、売買需要・成約が大幅に増加しました。都内の基準地価も約7%増を記録しており、不動産への注目度の高さがうかがえます。しかし、この市況を「バブル再来」と安易に捉えるのは危険です。昭和62年のバブル絶頂期には、基準地価が年間85%も上昇していました。これに比べれば、現在の価格上昇率は当時の10分の1以下であり、投機的な過熱感とは一線を画しています。

日銀の使命である物価の安定に向けて、10月には利上げの観測が高まっています。多くのアナリストは、最終的な政策金利(ターミナルレート)を1%と想定し、残り2回の利上げで0.5%の上昇を予測しています 。金利上昇は、投資用不動産だけでなく、住宅ローンにも影響を及ぼすため、不動産投資家にとっては慎重な判断が求められます 。しかし、この金利上昇は、必ずしもネガティブな要因ばかりではありません。
例えば、1億円の借入金利が0.5%上昇した場合、年間の利息負担は50万円増加します 。しかし、もし1億円の不動産の価値が毎年0.5%ずつ上昇すれば、この金利負担増は相殺されることになります 。全国平均の地価トレンドを考慮しても、このバランスは十分に実現可能だと考えられます 。
この事実が示すのは、金利の変動に一喜一憂するのではなく、不動産そのものの価値に着目することの重要性です。物件が持つ本来の価値や、将来的な価格上昇の可能性を見極めることが、富裕層の不動産投資においては、金利リスクを乗り越える鍵となるのです。

一方で、賃料は粘着性や遅効性があるため、価格よりも緩やかに変動します 。しかし、過去の家賃上昇率の推移を見ると、今後本格的に上がっていく可能性も十分にあります。一部の都心を除けば、緩やかな上昇を想定していますが、中国経済の低迷と円安の継続が重なり、アジア系の富裕層からのインバウンド需要が継続しているため、都内を中心に需要超過の状態が続いています 。この旺盛な需要が、賃料のさらなる上昇を後押しする可能性があります。

当社が専門にしている中古郊外RC物件につきましては、大きな価格変動は感じていないものの、土地のポテンシャルや建物グレード、管理・修繕履歴など踏まえた総合判断での優良物件は希少になりつつあります。 
不動産の場合、株式等の金融商品と比較してシャープレシオを算出することは稀ですが、価格変動リスク(標準偏差)を抑えるような物件選定、管理を行っていきたいと考えています。

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現時点の当社の管理戸数は約3000戸、入居率97.5%で、預かり資産残高は約300億円越ですが、賃貸管理、建物管理においてさらなる優位性を発揮できるよう改善してまいります。

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図① シャープレシオ
【出典:マネスマ教室 https://money-smart-kyoshitsu.com/toshin/sharperatio.html】

【2】地銀の最新融資動向

千葉銀行と千葉興銀との経営統合が決まり、総資産20兆円を超える4つ目の地銀グループが誕生する見込みです。直近では、東日本銀行様、りそな銀行様、東京スター銀行様、北陸銀行様でご相談中の案件がありますが、規模が大きいがゆえの強みを感じています。

例えば、りそな銀行様ではこの市況下において金利1%を切るレートでのご承認があり、イールドギャップ(NOI-金利)の優位性が魅力です。横浜フィナンシャルグループ様(旧コンコルディアフィナンシャルグループ様)においてはRC物件で60年融資が定着しつつあり、建物価値の維持、管理の重要性が高まっていくと考えています。

当社の物件のお引き渡し実績においては、資産管理会社様での売買になるため、アパートローンではなく、プロパーローンに特化していますが、融資条件と中長期的な関係を考慮しますと、やはりプロパーローンがお勧めです。

図②アパートローンとプロパーローンの違い
【出典:THE GOLDONLINE https://gentosha-go.com/articles/-/15374

金融機関の立場としましては、規模拡大及び効率的な利益確保に向けて、今後もグループの再編が加速していくものと予想されます。当社は千葉銀行様や横浜フィナンシャルグループ様とのお取引も多く、融資方針の変化にはアンテナを張っていますが、全体的な方針として、新規案件にはかなり慎重だと感じます。
直接、新規融資の相談電話が一定数あるものの、ご紹介ルート以外は対応できない事情があるようです。これは、生産性を重視するトレンドの中で、与信判断の手続き等を含め、新規顧客の集客コストが一般的に高いためリピート案件を増やす戦略にシフトしているためだと理解しています。
とはいえ、金融機関の宿命として過度な癒着を防ぐためにも、定期的な人事異動があり、9月末のタイミングでお世話になった方の異動のご挨拶もありました。あくまで組織として、お互いの強みを活かしながら協力してまいります。

また、冒頭で触れたバブル期との比較におきましては、バブル崩壊の反省を踏まえ、現在の融資審査は客観的なスコアリングを重視するようになりました。バブル期には、定性評価に重きが置かれていたと聞いていますが、現在は、定量評価(1次評価)、定性評価(2次評価)、潜在返済力評価(3次評価)の3つの段階を経て格付けを決めていることが一般的です。特に重要なのが、定量評価(1次評価)です 。この段階では、以下の項目が評価されます。

安定性 :自己資本比率など
収益性 :経常利益率など
成長性 :経常利益増加率など
返済能力:債務償還年数

賃貸事業の場合、自己資本比率と債務償還年数が重要なポイントになります 。
格付けによって、貸倒引当金を設定しますが、仮に融資途中で格付けが下がった場合、利息収益≦みならず、預金者、消費者の立場としても、どんな会社・商品に対して、どれだけのお金を使うのか、明確な意思を持つことで世の中に貢献できるのではないでしょうか。

格付け
図③格付け、債務区分と金利の関係
【出典:企業スタートブック HP https://kigyo-startbook.com/273-loan-decision-criteria

【3】セロトニントランスポーター遺伝子と戦略的な資産形成

2014年にNISAがスタートして約10年、日本社会における資産形成の意識は大きく変化しました初年度には500万口座だったNISA口座数は、現在では2,500万口座にまで増加し、実に約5倍の成長を遂げています。特に、つみたてNISAについては、投資に慎重だったとされる20代、30代の若い世代や女性の加入が顕著に進んでいます。

この流れは、株式市場にも明確に表れています。2014年の日経平均が約15,000円だったことを考えると、株価は約3倍にまで上昇しました。この事実は、不動産投資においても同様の構造を示しています。不動産売買も賃貸も、本質的な構造は同じです。供給に対して需要が増えれば、価格が上がるのは必然です。

過去を振り返り、「もっと早く始めていれば」と悔やむ気持ちは、多くの人が共感するものです。しかし、いざその渦中にいると、誰もが簡単に決断できるわけではありません。集団心理が働き、目新しいことや未知の領域に対して、先行リスクを取ることは非常に難しいものです。
しかし、富裕層の不動産投資においては、この「先行者」となることが、長期的な資産形成において重要な意味を持ちます。市場が本格的に上昇する前に、しっかりと情報を精査し、論理的な判断を下すことで、より有利な条件で投資を開始できるからです。周囲の動向に流されず、自らの明確な意思と計画に基づいて行動することが、成功への鍵となります。

スタンフォード大学の社会学者エベレット・M・ロジャーズ教授のイノベーター理論では、新しいアイデアや技術の普及を5つのタイプに分類しています 。NISA口座は、現在すでに日本人口の約25%(4人に1人)が加入しており、アーリーマジョリティ層まで浸透していると考えられます。政府目標である3,400万口座 に向けてまだ拡大余地があるため、「貯蓄から投資へ」という意識はさらに広がり、もう一段の上昇を期待する方も多いでしょう。

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図⑤イノベーター理論の5つのタイプ
【出典:株式会社 電通マクロミルインサイトhttps://www.dm-insight.jp/column/innovator/】

しかし、どれだけ資産を築いても常に不安を感じる人もいるのは事実です。集団の空気や流れに合わせやすいという日本人の民族性や遺伝子が、その背景にあると言われています 。具体的には、日本人はセロトニン(幸福ホルモン)の分泌量が世界的に少ない民族であると指摘されています。これは、江戸時代の鎖国や度重なる災害を生き抜いてきた結果とも考えられており、このセロトニンの少なさが、日本人の慎重さや勤勉さといった特性に繋がっているという見方もあります。

セロトニンポーター遺伝子
図④日本法人の借入金・利益剰余金・自己資本比率の動向
【出典:一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会

日本人のセロトニントランスポーター遺伝子タイプは、以下のように分類されます。

  • SS型(不安型): 68%
  • SL型(中立型): 30%
  • LL型(楽観型): 2%

セロトニンは、運動、日光浴、睡眠、そして「推し活」などによって増やすことができるとされています。しかし、セロトニンが少ないことにはメリットもあり、先に述べたような、慎重さや勤勉さといった特性に繋がっています。必ずしもどちらのタイプが良いという話ではなく、環境や状況次第で優位性が変わると言えるでしょう。

「遺伝だから仕方ない」と割り切ってしまうのではなく、このような遺伝的要素や資本主義の構造を深く理解した上で、戦略的かつ計画的な資産形成を行うことが重要です。不動産も含めたポートフォリオを構築する際は、資金調達や時間軸も大切ですが、それ以上に重要なのは、目先のお金に囚われて、長期的な視点を見失ってしまう生き方を避けることです。自分の資産を、感情ではなく、論理に基づいた確固たる計画で運用することこそが、富裕層としての真の豊かさにつながるのではないでしょうか。

参考:内閣府 世論調査 https://survey.gov-online.go.jp/r05/r05-life/2.html#midashi13

NISA口座数、買付額
図⑥NISA口座数、買付額の推移【出典:金融庁 HP】

レインズから分かる収益不動産マーケット

次に9月のレインズ成約状況についてご紹介させて頂きます。

1都3県の成約件数としましては昨年対比128%増先月からは8件増加となっています。

2025年8月成約数:76件(確定値)
2025年9月成約数:84件(速報値)
※9月は速報値のため上振れする可能性はあります

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レインズ在庫は【平成元年築以降、1億~5億、都内でレインズに1543件掲載、※重複有】先月の1568件から25件減少でした。

①「本厚木」駅 バス15分 1990年 RC造
売出価格 1.4億円 ⇒ 成約価格 1.35億円
土地 146坪 建物 253坪
成約利回り ⇒ 10.2%
ポイント:角地、全戸南向き
留意点:バス便、機械式駐車場

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「北浦和」駅 徒歩17分 1985年 RC造
売出価格 1.09億円 ⇒ 成約価格 9000万円
土地 97坪 建物 154坪
成約利回り ⇒ 8.6%
ポイント:土地資産性〇
留意点:私道、築40年(修繕履歴要確認)

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「矢部」駅 徒歩5分 1988年 RC造
売出価格 1.32億円 ⇒ 成約価格 1.27億円
土地 99.坪 建物 161坪
成約利回り ⇒ 8.1%
ポイント:駅5分、全面タイル張り、角地
留意点:1階テナント、管理状況△

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④「志木」駅 徒歩18分 1991年 RC造
売出価格 46000万円 ⇒ 成約価格 46000万円 ※満額
土地 339坪 建物 675坪
成約利回り ⇒ 7.0% 
ポイント:大規模修繕実施済
留意点:徒歩18分

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⑤「南行徳」駅 徒歩12分 1997年 RC造
売出価格 29000万円 ⇒ 成約価格 27000万円
土地 171坪 建物 272坪
成約利回り ⇒ 6.6%
ポイント:大和ハウス施工、平成9年築RC
留意点:ハザードリスク

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⑥「弘明寺」駅 徒歩5分 2005年 RC造
売出価格 成約価格 1.75億円 ※満額
土地 65坪 建物 110坪
成約利回り ⇒ 6.6% 
ポイント:築浅、駅近、2路線利用可
留意点:建物グレード△、単身需給バランス△

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「三ノ輪」駅 徒歩7分 1991年 RC造
売出価格 4.5億円 ⇒ 成約価格 4.45億円
土地 97坪 建物 279坪
成約利回り ⇒ 5.2%
ポイント:EV交換済み、2路線利用可、検査済証あり
留意点:ハザードリスク、積算比率約30%

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⑧「緑が丘」駅 徒歩3分 2006年 RC造
売出価格 5.1億円 ⇒ 成約価格 5.1億円 ※満額
土地 80坪 建物 111坪
成約利回り ⇒ 3.7%
ポイント:築浅、駅近、角地、賃貸需給バランス〇
留意点:利回り3%台

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