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目次
本記事は公開1~2か月前に配信した富裕層向け不動産投資メルマガの抜粋です。
現場で感じる不動産市況~レインズ在庫と成約率、金融庁の融資モニタリングなど~
【1】現場で感じる不動産市況
◆不動産市況:インバウンドと国内需要の動向
賃貸マンションの管理においては、例年夏はエアコンの交換需要が最も高まります。私たちは、ご入居者の安心・安全を維持するため、一層の努力を重ねています。
さて、直近の売買市況を振り返ると、本格的な「日本買い」が継続し、加速している印象を受けます。かつて、インバウンド需要は季節的なものとして捉えられていましたが、今や日本全体の不動産投資を牽引する存在感を放っています。例えば、大手不動産会社である大東建託とオープンハウスは、ホテル業界への新規参入を発表しました。これは、新規事業においてもインバウンド需要を取り込もうとする動きの表れです。今年2月には、ブラックストーンが過去最大級となる4,000億円規模の不動産を取得し、リーマンショック前の2007年上半期の記録を塗り替え、大きな話題となりました 。
都内の家賃上昇スピードは、さらに加速している印象です。特に23区の単身物件では、直近1年間で家賃が10%上昇しています 。一方で、この上昇ペースに賃上げが追いつかない現状もあり、郊外への引っ越し需要も旺盛です。大手不動産会社も海外需要をターゲットにした商品戦略に力を入れています。外資系ファンドによる高額投資の活況は、リーマンショックやネットバブル崩壊前のムードにも似ているように感じます。しかし、過去のデフレ環境下での成功体験や失敗体験が足かせとなる可能性もあるため、刻々と変化する環境に合わせて学び続けなければならない危機感を覚えます。
◆販売と融資の動向:高レバレッジ投資の可能性
販売面では、新富裕層のお客様への融資が引き続き堅調です。キャッシュフローとストック(資産価値)の与信を最大限に活用し、ポートフォリオを効率的に積み上げることで、自己資金5%〜10%の高レバレッジ、かつ1%前半の低金利で融資を受けている事例が多く見られます。このような条件で融資が実行される背景には、金融機関が個々の富裕層の信用力を高く評価していることがあります。
また直近1年間の東京都(1億円〜5億円)におけるレインズの在庫件数と成約率を分析したところ、在庫の総量は微増傾向にありますが、同時に契約件数も増加傾向にあります。これにより、成約率(月間成約件数/月末在庫件数)は安定しており、需給バランスが保たれていると判断しています。これは、市場が活発でありながらも、過度な供給過多に陥っていない健全な状態を示しています。

◆新たなトレンド:共働き世帯の需要とコインランドリー市場
その他の注目すべきトレンドとして、共働き世帯の増加に伴う「家事の時短需要」の高まりがあります。その一例が、コインランドリーの需要拡大です。

最大手のTOSEIは、世界初の2段式洗濯機(洗濯機と洗濯乾燥機の2段式)を発表しました。この技術革新により、従来の8万円/㎡だった設置効率が、14万円/㎡に向上する見込みです。これは、地価や家賃上昇が進む都心での設置需要に応える、画期的なソリューションと言えます。
従来、コインランドリーは都心やタワーマンションとの相性が良いイメージでしたが、最近では郊外エリアでも駐車場付の店舗を見かけます。不動産投資家としては、所有物件の敷地や共用部の空きスペースを活用することで、入居者への付加価値向上と、新たな収益源の確保が検討できるのではないでしょうか。
【2】地銀の最新融資動向
◆金融機関の融資動向:融資のリアルな舞台裏
直近、金融機関の方々と日頃からお話をさせていただく中で、「9月は半期決算の目標達成に向けて重要な時期です」という言葉をよく耳にします。金融機関にもよりますが、半期ごとの評価を行う場合、9月末の決算に向けて、案件に対して非常に前のめりな姿勢を見せることがある一方で、急ぎの新規案件を受け付けにくい時期でもあります 。すでに融資目標を達成した支店や担当者からは、「9月末ではなく、10月以降でお願いしたい」という本音を聞くこともございます 。
不動産売買においては、融資を実行する側だけでなく、返済を受ける立場も存在します。一部の支店では、売買に伴う完済(残高減少)が増えているようです。現状維持は停滞を意味するため、融資ボリュームの獲得には前向きな姿勢が見られます。
「時期によって融資姿勢が変わるのはどうなのか」という意見も勿論ございますが、現場で感じる肌感覚では、やはりいつ融資を受けるのかによって、大きな違いがあると感じています。市場の構造的な原理として、絶対に融資が通る案件も、絶対にNGな案件もありません。すべての関係者がギリギリのところで悩みながら、案件を進めていただいています。店舗削減、人件費削減の流れがある中で、融資判断に付随する手間や時間を考えますと、誰に・いつ・どうやってお願いするのかが非常に重要になります。仕事の基本を大切にしていきたいと、改めて襟を正す思いです。
◆直近の不動産投資融資トレンド:3つのテーマ
次に、直近の融資トレンドとして、以下3つのテーマを挙げさせていただきます。
1. エビデンスチェックの厳格化
確定申告や金融資産のチェックは厳しくなりつつあります。所得については節税で圧縮されたものは、低所得と判定されてしまう傾向にあります。また、金融資産については、その形成経緯、いわゆる「ストーリー」を求められるようになっています。
2. 不動産の本質的価値
景気が良いと金融商品的な側面にスポットライトが当たるため、不動産として見たときの本質的な土地、建物の価値もしっかりと見極めようという金融機関の意向を感じます。
3. モニタリング
融資直後の買い増しハードルは上がっています。最低でも一年間の決算、所得を把握してからの2棟目融資判断となることが多いため、かつてのように急ピッチで買い増すことが難しくなっています。運用計画を立てた上で、時間も味方につける必要があると考えます。
モニタリングの重要性の高まりについては、金融庁の組織変更も背景にあります。
いわき信用組合、苫小牧信金の融資問題、業務改善命令を考慮し、今年7月、金融庁は信用組合、信用金庫の検査体制を推進する中核組織として、協同組織金融モニタリング室を設置しました。信金などはメガバンクや地銀とは違う独自視点での融資を受けられることが優位性の一つでしたが、この組織変更により、融資現場でも方針や考え方が変わったという声もあります。
その他、栃木信金では有価証券の含み損が膨らみ資本支援を受けるというニュースがありました。低金利環境で金融機関が有価証券投資にシフトしたための問題も表面化しています。金利上昇局面に入り、金融機関の再編も加速すると思われます。不正融資などの問題が発生する度に、管理方針や細かいルール変更がありますが、時代の変化に適用するというのは経営の大原則だと思います。
◆世界的なマネー供給と不動産投資のチャンス
一方、世界全体のマネー供給量に目を向けますと、日米欧中など主要国の通貨の供給量(M2)は7月末時点で計112兆ドル(約1.6京円)と資金供給量が増加しています。投資家の待機資金を映す米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)は7兆ドル台に達していることなどから、世界的にもお金が溢れている状態と言えます。
今後はトランプ大統領の利下げ方針やFRBの運営にも注目が集まりますが、ますます経済的格差が広がっていくことが予想されます。このような状況下で、インフレ対策かつ、レバレッジ資産として、オーナー様からの需要のみならず、金融機関目線としても不動産投資を貴重なビジネスチャンスとして捉えていると感じています。
参考:金融庁 HP 2025事務年度 金融行政方針 主なポイントhttps://www.fsa.go.jp/news/r7/20250829/strategic_priorities_2025_point.pdf
【3】年次経済財政報告から読み解く賃上げとリスク選好
◆経済動向と不動産投資の未来:賃上げ、リスク、そして眠れる資産の活用
2025年7月に発表された年次経済財政報告のスローガンは、「内外のリスクを乗り越え、賃上げを起点とした成⻑型経済の実現へ」というものでした。この言葉には、日本経済が直面する課題を乗り越え、持続的な成長を実現しようという政府の強い決意が感じられます。報告書全体を通しても、賃上げを強力に推進していく必要性と、そのための強い覚悟が示されています。

賃貸経営をされているオーナー様にとって、この賃上げの動きは極めて重要な意味を持ちます。家賃を上げて収益を増やしたいオーナー様と、日々の暮らしを楽にしたいご入居者様。一見、相反する目的のようですが、賃金が上昇すれば、ご入居者様の支払い能力が向上し、結果として両者の目的が永続的に解決される可能性があります。不動産投資の観点からも、賃貸経営環境の健全化に繋がるため、賃上げは非常にポジティブな要素だと考えられます。
しかし、報告書にも記載されている通り、賃金の上昇は業界や業種によって異なります。すべての賃金が均等に上がるわけではないため、ご入居者様一人ひとりの経済状況は個別性が強く、一方的な家賃値上げに対して、すべての理解を得られるわけではありません。私たちは、賃貸経営の最も重要な顧客がご入居者様であるという観点に立ち、丁寧なコミュニケーションと、顧客満足度向上への知恵を絞る必要があります。単なる値上げ交渉ではなく、物件の価値を高めるためのリノベーションや、サービスの向上を提案することが、富裕層の不動産投資家には求められます。
日本全体の平均的な世帯年収は約500万円と言われていますが、勤労所得の上昇ペースよりも資産価格の上昇ペースが速いのが現状です。このため、経済的に恵まれている立場として、社会に対する責任や義務をセットで考えることが、現代の不動産投資家には求められるのではないでしょうか。
◆リスク選好と資本主義:眠れる資産の覚醒
日本人は欧米と比べて現金保有比率が高く、リスク資産への投資に消極的なイメージがあります。しかし、日銀の論文には、これは民族性の問題ではなく、第二次世界大戦を境に価値基準が変わったことや、戦後の政策が要因ではないかという興味深い分析があります。この視点は、日本人のリスク選好を捉え直す上で非常に重要なテーマです。
基本的に不動産は、レバレッジをかけてリターンを追求できる資産であるため、リスク選好と密接な関係にあります。不動産投資がお好きな方は、融資を最大限活用する「フルローン」が望ましいと考える傾向があります。一方で、不動産を所有しない方や、賃貸を主体的に選ぶ方にとって、「フルローン」と聞くと怖いと感じる反応が予想されます。
年次財政経済報告には、リスク回避度を測定する仮想くじと、期待値(支払意思額)の実験結果が記載されています。この実験結果から、リスク回避的な人は、現在の金融資産について「足らない」と感じている傾向があることが明らかになりました。つまり、リスクを避けたいと行動した結果、金融資産が不足するという結果を自ら引き寄せている可能性があるのです。年齢によってもリスク回避度は変化し、若い世代の方がリスクを取る傾向があるというデータも示されています。
金融資産があるからリスクを取れるのか、それともリスクを取るから金融資産が増えるのか、どちらの解釈も可能です。しかし、資本主義はリスクを取る者に対して優しい仕組みであることは間違いありません。勇気を持って一歩を踏み出すことが、資産を増やしていくための第一歩なのです。
■参考:
内閣府HP 令和7年度 年次経済財政報告 https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je25/pdf/all_01.pdf
日銀HP 日本の家計の金融資産選択行動 -日本の家計はなぜリスク資産投資に消極的であるのか?https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_1999/data/ron9911c.pdf


レインズから分かる収益不動産マーケット
次に8月のレインズ成約状況についてご紹介させて頂きます。
1都3県の成約件数としましては昨年対比26%増で、先月からは58件減少となっています。
2025年7月成約数:111件(確定値)
2025年8月成約数:53件(速報値)
※8月は速報値のため上振れする可能性はあります

レインズ在庫は【平成元年築以降、1億~5億、都内でレインズに1568件掲載、※重複有】
先月の1570件から2件減少でした。
①「熊谷」駅 徒歩24分 2006年 RC造
売出価格 1.54億円 ⇒ 成約価格 1.49億円
土地 269坪 建物 226坪
成約利回り ⇒ 8.3%
ポイント:残存28年、賃貸需給バランス〇
留意点:徒歩24分、エレベーターあり

②「浦安」駅 徒歩18分 1986年 RC造
売出価格 3.30億円 ⇒ 成約価格 3.10億円
土地 193坪 建物 334坪
成約利回り ⇒ 7.7%
ポイント:浦安エリア、全面タイル貼り
留意点:残存8年、ハザードリスク

③「みずほ台」駅 徒歩5分 1988年 RC造
売出価格 1.60億円 ⇒ 成約価格 1.50億円
土地 107坪 建物 207坪
成約利回り ⇒ 7.6%
ポイント:駅5分、角地、賃貸需給〇
留意点:線路脇、建物状態要確認

④「上石神井」駅 徒歩7分 1995年 RC造
売出価格 2.25億円 ⇒ 成約価格 2.118億円
土地 78坪 建物 159坪
成約利回り ⇒ 6.7%
ポイント:土地資産性〇
留意点:容積オーバー(車庫転用)

⑤「藤沢」駅 徒歩5分 2000年 RC造
売出価格 2.98億円 ⇒ 成約価格 2.10億円
土地 53坪 建物 125坪
成約利回り ⇒ 5.9%
ポイント:駅5分、満室稼働
留意点:エレベータ―あり、接道△

⑥「桜木町」駅 徒歩13分 1986年 RC造
売出価格 5.00億円 ⇒ 成約価格 4.80億円
土地 432坪 建物 252坪
成約利回り ⇒ 5.7%
ポイント:3路線利用可、賃貸需給〇、容積率未消化
留意点:残存年数8年、和室有

⑦「鶴見」駅 バス14分 1998年 RC造
売出価格 2.772億円 ⇒ 成約価格 2.70億円
土地 100坪 建物 194坪
成約利回り ⇒ 5.3%
ポイント:全面タイル張り、接道〇
留意点:バス便、都市計画道路有

⑧「等々力」駅 徒歩15分 2020年 RC造
売出価格 2.48億円 ⇒ 成約価格 2.40億円
土地 30坪 建物 61坪
成約利回り ⇒ 4.7%
ポイント:築5年、広めの単身(26㎡)
留意点:打ちっぱなしRC、半地下

⑨「椎名町」駅 徒歩3分 2003年 RC造
売出価格 1.83億円 ⇒ 成約価格 1.80億円
土地 40坪 建物 71坪
成約利回り⇒ 4.7%
ポイント:2路線利用可、角地
留意点:私道接道

⑩「大岡山」駅 徒歩5分 1993年 RC造
売出価格 2.05億円 ⇒ 成約価格 1.85億円
土地 35坪 建物 71坪
成約利回り ⇒ 4.5%
ポイント:駅5分、角地
留意点:3点ユニット

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